黒澤明『姿三四郎』あらすじとレビュー|斬新なスローモーションを見事に使い切ったデビュー作

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この記事では、黒澤明監督のデビュー作『姿三四郎』のあらすじと映画の解説をご紹介します。

1943年に公開された『姿三四郎』。

戦時下の暗い時代に大ヒットをおさめ、黒澤明監督の出世作となりました。

それでは、黒澤明監督の作品を40年間観続けてきた筆者が、あらすじと映画の解説をご紹介しますね。

「姿三四郎」 あらすじ

姿三四郎は会津出身です。柔道家を目指して東京へやってきました。

入門したのは、神明活流。門馬三郎が統括している流派でした。

入門した当日、なんと門馬たちは徒党を組み、修道館の矢野正五郎を襲います。

しかし、矢野はたったひとりで門馬たちの徒党を倒します。結果、神明活流は崩壊します。

その様子を至近距離で見ていた三四郎は、矢野の立ち振る舞いに圧倒され、矢野に弟子入りします。

数年後、三四郎は修道館の門下生の中でもトップの実力を持つ柔道家に成長していました。

そんなある日、修道館に来客があります。怪しく、計り知れない何かをたくらんでいる気配です…。

「姿三四郎」の解説

「姿三四郎」は、黒澤明氏の映画監督デビュー作品です。

富田常雄さんが描いた小説の前半部分から、三四郎とその恋人乙美、子爵の令嬢である南小路の三角関係を描いた恋愛部分をカットし、柔道の武術に精進する三四郎の姿を通して人間的に成長していく青年の様子を描いています。

物語の中心は、修道館の師匠、矢野正五郎と三四郎とのやりとりです。師弟関係を重視したストーリーになっています。

この師弟関係は、その後の黒澤監督作品でも多く見られるようになっていきます。

黒澤監督の映画演出は、柔道のけいこや試合などで見られる活動的なアクションシーンだけではなく、ドラマの部分でも躍動的に効果を発揮しています。

例えば、三四郎と小夜が神社の階段で絡むシーンがあります。

それまでの日本映画では、こういったシーンは実に淡泊に、あっさりと見せていました。今回の作品では、今までになかった迫力あふれるシーン展開となっています。

最も印象的だったシーンは、三四郎が門馬を投げ出すシーンです。

これは黒澤監督だからこそ撮れたものでしょう。

門馬が道場で、身体を横向きにして浮遊している精子写真を効果的に使っているのです。

次のショットで、門馬は羽目板に身体を強く打ちつけられます。

道場の中は静まり返っています。言葉をなくし、ただ立ち尽くすだけの人々を、カメラがゆっくりと左から右へ追います。

その後、叩きつけられた門馬のアップが映り、同時に障子戸が天井近くからスローモーションのように門馬の上に落ちてきます。

見ているだけで、門馬は絶命したと思える演出方法です。

この演出方法は、それまでの映画にはありませんでした。

スローモーションを効果的に使った見せ方です。

「姿三四郎」 各サイトのレビュー紹介

「姿三四郎」を見た現代の人々から、多くのレビューが寄せられています。

今回は、その中でもAmazonとYahoo!映画、フィルマークスに寄せられたレビューの一部をご紹介します。

Amazonレビュー…評価4.3点

・これが黒澤監督のデビュー作なのかと思うと、圧巻の一言です。度肝を抜かれる場面が作品の中に数多く出てきます
・このデビュー作を土台に、その後の黒澤映画に見られる要素がこの1本に濃縮されています。
・場面設定に長けています。
・これだけの画面の躍動、勢い、瑞々しさを見ていると、当時の観客を惹きつけた理由が
とてもよく分かります。
・明治は、自由闊達な時代と言われていますが、その光景がこの作品から十分に伝わってきます。
・このデビュー作こそ、黒澤ファンなら必見です。
・見応えがあり、見終わったあとで心がスカッとするさわやかな映画になっています。
・当時の撮影技術では精一杯だったのかも知れませんが、黒澤監督の作品は音質が悪く、残念です。

Yahoo!映画レビュー…3.4点

・この作品で映し出された美しさ以上に強いものはないと思います。
・荒々しい場面がこの一作で充分に楽しめます。
・老境に達した風格を、志村喬さんが丁寧に演じています。
・いちばんの迫力を感じたのは、祭りでの男衆との喧嘩のシーンでした。
・正直、そんなに面白くはありませんでした。
・「最長版」はDVD限定です。
・戦時の監視下の中で作った作品としては、それなりの規制があったのではないか。
・最初から最後まで、女から逃げている作品です。
・礼に始まり、礼に終わる。柔道の精神ははるか昔から生きていたのでしょう。
・黒澤監督の初作品とのことで期待しましたが、最初から良い作品は作れなかったのでしょう。
・作品の途中で、急にはっとさせる画面が幾度も登場します。わずか一瞬の冴えるショットがとても魅力的です。

フィルマークスレビュー…3.4点

・言葉に、無駄のない力強さを感じます。
・ラストの決闘シーンは、一見の価値があります。
・ちょっとしたメロドラマのようでした。階段の行き来のみという空間だけが舞台のようです。
・真の強さとは何かを問われている作品です。
・黒澤監督のデビュー作品と思うからか、よくできている印象です。
・目が離せない長い決闘シーンこそ、黒澤映画の真の姿でしょう。
・志村喬さんが、見事に年齢以上の役を演じ切っています。
・当時は戦時中でしたが、その中でも黒澤監督が表現したかった「色」がはっきりと感じ取れます。
・観ていて、ふとバガボンドを思い出してしまいました。
・当時は表現の自由などない時代。黒澤監督の描き出す姿三四郎は、躍動力にあふれています。
・最初から最後まで、風の強さしか感じませんでした。
・白黒映画の方が、逆に味が出ているように思います。

「姿三四郎」まとめ

この記事では、黒澤監督のデビュー作『姿三四郎』のあらすじと映画の解説をご紹介しました。

映画通にとって、世界の巨匠・黒澤監督のデビュー作は是非とも押さえておきたい一本ですね。

最近では、VODでも視聴できますので、是非チェックしてみてくださいね!

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