黒澤明『用心棒』あらすじとレビュー|日本映画史上で最高峰の娯楽映画!

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この記事では、黒澤明監督の第20作品目の映画『用心棒』のあらすじと映画の解説をご紹介します。

1961年に公開された『用心棒』。

立ち回りの動きはラグビーの動きを参考にしたのは有名な話ですね!

それでは、黒澤明監督の作品を40年間のこよなく愛し続けている筆者が『用心棒』のあらすじと映画の解説をご紹介しますね。

『用心棒』あらすじ

1人の風来坊の浪人が主人公の時代劇。

荒れ果てた宿場町にやってきた一人の浪人。

彼がながれ着いたのはとある宿場町でした。その町では賭場の運営を巡って町の2人の権力者が争っており、町はその紛争により二分されて荒廃していました。

人通りのない宿場。

いるのは、人間の手首をくわえて走る犬とヤクザだけ。

ヤクザに囲まれて凄まれる浪人

しかし、浪人は全く動じない。

浪人は宿場の飯屋に入ったが無一文。

飯屋の店主・権爺はすぐ宿場を出ろと諭すが、浪人はこの宿場で一暴れして飯代を返すという。

そして飯屋表に出るなり、ヤクザを数人斬って見せる浪人。

やくざの親分に自分を用心棒として雇えと、売り込んだ…

『用心棒』解説

黒澤映画を代表するエンターテイメント作品。

黒澤さんが「理屈抜きに面白い。楽しい映画を作りたい」と思い撮ったのが、この作品。

ダシール・ハメットのハードボイルド小説を、二組のやくざが対立してる江戸時代の宿場の話に替えました。

そこにやってきた浪人・桑畑三十郎が双方に巧いことことを言ってけしかけ、自滅させるというストーリーです。

「映画の面白さを十二分に出した作品を作ってみたいという夢があった。その夢を実現させたのが、これだ」

「めっぽう強いのがいて、めちゃくちゃに悪玉をやっつけたら気持ちいいだろうというところから始まった」

と黒澤さんは語ります。

主演の三船敏郎さんの豪快なキャラクターが三十郎にぴったりですが、三船さん以外の役者陣も個性豊かであらゆる要素で面白い映画に仕上がっています。

監督の黒澤明さんは本作について「この作品の最大の魅力は、立ち回りのシーンではなく主人公の三十郎の特異なキャラクター設定にある」と語っています。

その言葉どおり本作の主人公である浪人の三十郎は、どこかクールで只ならぬ強者であるという佇まいもありながら、粗野で3枚目なところも併せ持つとても魅力的なキャラクターに仕上がっております。

物語の中に三十郎が居るというよりは、三十郎というキャラクターが物語を引っ張っていくような、彼というキャラクターを目で追っているうちに物語に引き込まれるというような作りになっています。

そしてその三十郎というキャラクターを引き立てる要素の1つに立ち回りの素晴らしさがあることもまた間違いありません。

事実、本作はその後の日本映画の立ち回りに多大なる影響を与えています。

例えば、今ではお約束の演出になっているすれ違いざまにお互い斬り合い片方が後に倒れる演出や、もう今では無くてはならない刀で斬る時の音なども本作によって発明されたものです。

また、本作の立ち回りの特徴である敵を斬る時に2回斬りつけるというものも、監督である黒澤明さんによる「1回斬ったくらいじゃすぐに死なないだろう」といった発想から生まれています。

こうして際立ったキャラクターを中心にストーリーが展開されていく様は、時代劇でありながらどこか西部劇を思い出させるのも特徴的です。

舞台になっている町も、どこかカラッと乾燥して寂れており、つむじ風舞うという時代劇の影響も感じさせる雰囲気になっています。

この町は撮影所の近所の広大な畑を潰してロケ地を建てることによって生み出されたそうです。

カメラが『羅生門』でコンビを組んだ宮川和夫さん。

ラストの三船VS仲代の決闘シーンのカッコよさはピカイチです。

砂嵐が舞う背景、歩き出し、だんだん近づくふたり・・・「あんまり近寄るんじゃねえ!」と放つ仲代達也。

不敵な笑みでこたえる三船敏郎。

まさに日本の映画史の中でも最高峰の名シーンです。

『用心棒』感想

私がこの作品を観終わって真っ先に出た感想は「あー面白かった」という一言です。

この作品はエンターテイメント映画として非常によく出来ています。

黒澤明さんの作品で七人の侍だけなら観たことあるよという方は多いかと存じますが、ぜひ次に観ていただきたいのは本作です。

というのも、本作は明らかに七人の侍のエンターテイメント魂を継承しており、その系譜だなと強く感じたからです。

私は白黒映画の世代ではなく、かつてはなんとなく白黒時代の映画は芸術的テーマ性が強くて抽象的だという偏見を持っていたのですが、それを圧倒的なエンターテイメント性を持って軽く吹き飛ばしてくれたのが七人の侍でした。

そして本作もその七人の侍のようなとても強いエンターテイメント性を持っています。

なので黒澤明さんをよく知らない人も、時代劇にあまり触れたことがない人でも、なんの予備知識もなしにストーリーに引き込まれると思います。それほど、シンプルに面白い映画なのです。

小難しい話や知識は一切不要です。

あなたもぜひこの主人公の三十郎の活躍を楽しんでみてください。

『用心棒』まとめ

黒澤明監督の第20作品目の映画『用心棒』のあらすじと映画の解説をご紹介しました。

「映画の面白さ、ここに結集!」のキャッチフレーズで1961年に公開された『用心棒』。

黒澤監督の娯楽映画部門では代表的な作品ですね。

『用心棒を観ずして黒澤明を語るなかれ』と思ってしまうのは私だけでしょうか?

これから黒澤作品を楽しもうとするならば、間違いなくオススメの一本です。

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